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T-Party:05

「雪…っ!」
 航海の隙間の休暇中に、これは私服だったが。無駄に顔の知れ過ぎている所為で、警備部と警察、両方の包囲をあっさりと突破してきた古代である。
「あら…進さん?」
そして、息せき切って現れた旦那さまをあっさり暢気に、あまり緊張感無く出迎えた奥さまだ。
 向こうの方での夫婦のやり取りは、適当に見ない振りもしながら。
「…何だ。やっと今頃、ニュースになったのか?」
「古代さんには連絡しなかったんだね、南部」
「そう言や、妙に『静か』だと思ってたんだよなあ」
 その遅れてきた古代に対して遠慮無く、言いたい放題の先着組だった。

「まあ…進が来ると煩いからな、あの通り」
 中でも一番その口に遠慮と容赦無かったのは当然、実兄だったが。
「でも、古代さんも戦闘士官ですよ?」
「人数だけなら警備部も居るし、警察の連中も居るだろうが」
 多少のフォロー入れようかと思った相原の言葉にも、途中でばっさり。
「大体、女房の心配だけしてるんなら、その辺の民間人と一緒だろ?」
 ごもっともな守の突っ込みに、相原も太田も重ねてフォローしようという気にはならなかった。

  ◇ ◇ ◇ ◇

「何?」
 携帯を取り出した南部に、サーシャが身を乗り出すようにして訊いた。
「…古代さんが、来たようですよ」
その返答は、慌てずゆっくりと文字を目で追ってからだったが。
「今頃~?」
 サーシャの呆れたように呟くのも、ごもっとも。
 追い出される者と残される者が、それぞれ内と外にその場を置き直してから既に半時間ばかり。何と無く騒がしく感じる外部(おもて)の気配に、軍か警察のどちらか、もしくはその両方が来ているんだろうと想像出来ていただけに、ちょっと…遅過ぎるように思って。
「雪さんが、連絡入れるの忘れたんだと思いますよ?」
 自分も連絡しなかった事など棚に上げておいて、まだ画面を眺めながら南部が答えた。
「…南部さんが、さっき連絡してたのって誰?」
「太田君」
 今頃やって来たくらいなんだから、叔父さまに…じゃないわよね。そう思いながら訊いてみれば、実にその通りだった。
「色々、お願いしたんですよねえ」
「って、仕事中だったらどうするのよ?」
 太田が現在、宙港で管制官やっている事はサーシャもご存知だ。三交代制の勤務なのだから、いつでも必ず捕まるとは限らない事も、また良くご存知。南部の言うお願いの中身も気にはなるが、全部を暢気に訊いている状況でも無い。だから、もっと気になる方だけを訊いておく事にした。
「どうもしませんよ、諦めるだけです」
 それほどの長文では無かったようで画面から顔を上げて、しかし閉じも仕舞いもしないまま。
「まあ…これ。太田君の端末から送られてますから、仕事はしてなかったようですけどね」

「どうした?」
 間近での2人の会話には大して注意払っていなかった真田だったが、名を呼ばれれば流石にそちらを見るし、こっそりと携帯を差し出されていた事にも気付いた。
「そろそろ『動く』事も考えときますか?」
 南部の言葉の続く前には既に、画面に目を落としていた真田だ。
「…見取り図の欲しいところだな」
 帰ろうとしていたのだから、守や相原たちとは少しだけ離れてしまっていて。下手に近寄って目立つのも避けたかった為に、そちらとの打ち合わせは無い。山名に向かって、機器の搬送を耳打ちしておいただけだ。
 ついでを言えば、これだけ近くに座っていながらも、真田と南部の間に言葉での打ち合わせも無い。
「それは相原君が何とかするでしょうよ。端末が違うんで、手間取ってるようですけどね」
 向かいから南部が、画面の下の方を指してくる。真田のまだ読み終わっていない後の方に、そういう事も書いてあるという意味だろう。
「待ちますか?」
「そうだな…時間的にも、まだ大丈夫だろう?」
 騒動の最初からでも、まだ1時間に足りない。
 幸か不幸か、人質として残された者たちはいずれもそれなりの肩書きの在る者ばかりだ。内心で恐怖を抱いていたとしても、この程度の時間ではまだ表にはっきりとは出さないで居られる程度には、図太く出来上がっている人間ばかりだった。
「なら、そう返しておきます」
 真田から返された携帯を受け取って、そのまま操作始めよう…として。
「ね?私は、何したら良いの?」
それを邪魔するように、横からサーシャが画面を覗き込んできた。
「…参謀にキレられたくないので、お嬢さんには何にもしないで戴きたいんですが」
「え~っ?」

  ◇ ◇ ◇ ◇

 相原にはああ答えたが、弟がこの場では数少ない実戦経験者である事も事実。警備部にしろ、警察にしろ。数年前の地上に銃を持った経験は在るだろうが、銃口の前に立たされた経験の方は…一体どれだけ。
「…って事で、役に立て」
 ここにやって来てから、他には何も目に入らなかったかのように奥さまの元へ一直線。放っておいたらいつまでも、その傍から離れなさそうな弟の襟首捕まえて引き摺ってきてから、その一言。
 いや…古代だって、良くも悪くも「非常事態慣れ」はしているのだから、いつまでも奥さまの安否にばかり気を取られているはずなど無い。単に、その終わるまで待ってやるような余裕が、守の方に無かっただけだ。

 参謀職としては長官が、父親としては娘が。まだ内部(なか)に残されている、という状況に。

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