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T-Party:04

 山名の携帯を借りて、自身の携帯に連絡を入れてみれば。
「居ますけど?」
と、その当人から。極めて暢気そうな返信の戻ってきて、思いっきり脱力させられた相原である。
「やっぱり、内部(なか)に居ました」
 しかし、守に報告するだけはしておく。
「だろうな」
 あのまま追い出されていたなら、当たり前にこちらと合流するはずだ。軍人として長官や参謀職が…だけではなく、母親を残してくる事になるのだから、それはもう確実に。それが居ないのだから、間違い無く中に居るだろうとは、守も相原も思ってはいた。
 だから、本当に残っていた事には驚かない守だ。
「どうします?」
「放っとけよ。どうせまだ動けやしねえし、それは向こうもだろ」

「も~、南部さんが持ってれば?」
 バッグに仕舞おうとすれば、貸せと言われる。返してもらったと思えば、相原から連絡が入る。その度に、一応は周りを見廻してから南部に手渡すのが、面倒で。
「そうしますよ」
 膨(むく)れているサーシャに苦笑しながら、南部は素直に携帯をポケットに仕舞い込んだ。

  ◇ ◇ ◇ ◇

 警備部と科学局、それから警察は多少前後しながらも、おおよそ同時にやって来た。守が雪の口から司令本部に連絡させたように、誰かが警察に連絡を入れたらしい。
「ま、間違っちゃいないよね」
 それを横目に見ながら、相原が呟いた。自分たちが真っ先に司令本部に…と思ったように、民間人がこんな事態に真っ先に思い浮かべるのは警察だ。
 第一、軍には逮捕・勾留権は無いのだから。
「余所見してる間に、手ぇ動かせよ」
「動かしてますよっ」
 ここに山名が居たので科学局の者は誰に問いもせず、ここに当たり前のように機器の積み込まれた車ごと残していった。半分ばかりは、既に起動可能な状態だ。残りの半分は、持ってきた科学局の誰かが接続してくれている最中だ。
「取り敢えず、人数と位置…ですよね?」
「だな」
「そういうのなら、こいつの方が得意な気がするけど」

 守と相原の会話に割り込んできた声に、そこに居た殆どがそちらを振り返った。
「南部から、連絡有ったんだよ」
 どうしてここに居るんだという相原の問いには、自身の携帯見せながら太田があっさりと答えた。
「雪サ~ンッ、ゴ無事デ何ヨリデス~ッ」
「感動の再会は後にしろっ、後にっっ!」
と己の感情にとても素直に、両腕広げて雪に駆け寄っていったアナライザーは、守の蹴りを後ろから思いっきり喰らっていた。
「…アナライザーは、連れて来ない方が良かったんじゃないの?」
「『探査機器』として見た場合、あいつより『使いやすい』のは無いぞ?」
「まあ…そりゃ、そうだけどさあ」
 どれだけ高性能でも普通の探査機器は、誰かが操作しなければ何の役に立たないし、こちらの行動や思考の先読みもしてはくれない。その意味では、確かにその通り。
 もっとも、単なる「探査機器」だなどと思った事は、太田にも相原にも無かったが。
「それから…もう要らなさそうな気もするけど、端末な。俺のだけど」
 周りを見れば、既に科学局から持ち込まれた機材がある。だから「要らなさそう」と言ったし、わざわざ自分のものだと断ったのは、カスタマイズが違うから相原には使い勝手が悪いかも、という意味でだ。
「あ、要る。借りる」
 使い勝手が悪いという意味なら、科学局からの借り物の機材だって似たり寄ったりだ。結果として使わないかも知れなくとも、数は有るに越した事は無い。
「え~と…雪さんっ」
 そんな様子の目の前の相原から、半身外れて太田が雪の名を呼ぶ。その声に、落とした頭部を拾って直しているアナライザーに、まだ何だか説教続けている義兄をそこに置いて、雪が素直に近付いてきた。
「何?太田君」
「着替えますか?」
「…え?」
 一旦は足下に置いていた、かなり大きな紙袋を2つから差し出されて。つい受け取ってしまった雪が、改めてその中を覗き込んだ。
「うちの姉妹(やつら)のなんで、趣味とサイズは責任持ちませんけどね。『それ』よりは動きやすいと思いますよ」
 一番上にあったものを少し引き出してみれば、それなりにきちんとしたデザインのスーツ…らしい。色も、ごく普通。制服では無いが、秘書という立場の者が着るには申し分無いシンプルさのようだ。
「サイズ…って、着られない訳じゃないのね?」
「その辺は、まあ…普通の体型なんで。うちの2人」
 雪が着て「何処かが余る」可能性は高いが、きつくて着られないという事だけは無いだろう。そう信じられる程度には己の姉妹の服のサイズを、何故だか嫌と言うほどご存知な太田である。
「有難う、助かるわ」
 今着ているドレスの動きづらさに辟易していたのだから、その言葉は全くの真実。
「…って、どうして幾つも有るの?」
 引っ張り出した方の底にも、違う色が見えていた。それに紙袋そのものがもう一つ、少なくとも3着在るという訳だ。
「3人居るじゃないですか。雪さんと、晶子さんと、山名さんと」
雪の問いに太田は、指を一つずつ折りながらあっさり答えた。

「…何で、そんな事に気が廻るんだよ?」
 自分の奥さまの着替えを「他の男が持ってきた」という状況に、相原がかなり…複雑な心境で、しかしものすごく感心もしながら訊けば。太田は黙って携帯を開いてちょっとした操作、それをそのまま相原に突き付けながら。
「俺がそこまで気付く訳無いだろ。南部だよ」
 画面に、見慣れた自分のアドレスから送られていた、長過ぎる文章。
 簡潔過ぎる状況の説明と、さっきの着替えやアナライザーの事も含む、幾つかの依頼。最後は「返信無用」という言葉で終わっていた。
「これ、だからな。俺、殆ど状況掴めてないんだけど…何が、どうなってるんだ?」
 見ている横から画面を指差して言うに、そりゃそうだよね…と思ってしまった相原だ。
 非常事態が発生したので、では簡潔過ぎるも通り越して要約が過ぎる。何の説明にもなっていない。むしろ…これで良く、太田がこの文章の通りにここまで来たよな、と呆れるくらいだ。
 で、仕方無く。
 順を追って、太田のここに来るまでの事を簡単に説明した。内部(なか)に誰の残っているのか、までをも。

  ◇ ◇ ◇ ◇

 多分に八つ当たりも込みで、気の済むまでアナライザーに説教喰らわせた…というか、締め上げて終わったというか。
「太田。お前、仕事は?」
 誰かが機器を操作する手間の省ける分だけ早い、とは守も承知だったから。さっき相原に言った「人数と位置の走査(スキャン)」をアナライザーに命じておいてから、ようやく近寄ってきてそんな事を訊く。
「三勤なんでこの後、宙港に出勤(で)ますが?」
 それで制服着てたのか、と素直に納得した相原だ。
 結果的に制服だった所為で、この周辺を固め始めた警備部にも警察にも途中止められる事無く、ここまで入って来られた訳だったが。何も説明していないあの文面から先回りして、わざわざ制服に着替えてくるなどとは思えなくて、不思議に思っていたからだ。
「なら、休め」
「…は?」
 極めて単純明快な、だがきっぱりとした守の「命令」に、太田が思いっきり間抜けた返事をした。
「折角の走査要員(オペレーター)、逃がしてたまるか」
それに対して守は、至極当然な表情(かお)して抜け抜けと。
 相原だって観測機器扱わせれば充分に優秀だが、太田の方がこういうものの取り扱いには余程慣れている。私情も含んで手早く片付けたいこの状況下、逃がしたくない…というのは守の本音だ。
「って、今から休むっても、代替要員見付かりませんよっ?」
 日付の変わる頃から朝まで、が三勤だ。それまで数時間と無い今になって「誰か、自分の代わりに仕事してくれ」と言って、誰が頷いてくれる?普通の人間なら寝ている時刻だ、誰も好き好んで働きたくなど無い。
「良いから、連絡入れろよ。俺が断ってやるから」
 参謀職直々に…って、誰も拒否出来ないって。そう思った太田と相原だったが、当の守もそれを分かっていて言っている。
「…分かりましたよ」
 答えながら太田は既に、携帯を開いて番号を探していた。

「やっぱり、こっちの方が楽ね」
 そう言いながら車から降りてきた雪は、まとめ上げていた髪も下ろして、目立ち過ぎるアクセサリーも取っ払って。制服では無いながら、さっきまでよりは見慣れたいつもの様子に戻っていた。
「後は、靴も有れば良かったんだけど…」
 と、見下ろした自分の足元はさっきのまま、精一杯に爪先立っているように艶やかなピンヒール。
「服は多少合わなくても何とかなりますけど、靴はそういう訳にいきませんって」
 雪の言葉に申し訳無さそうにも苦笑しながら、太田が言い訳をしてみせた。
「まあ、いざとなれば裸足ね」
合わない靴に足を痛めてしまうくらいなら、いっそ合うかどうか分からないからと持ってこない事も、むしろ親切。だから雪も、太田の言い訳を素直に笑って聞いていた。
 雪に続いて、晶子も降りてきていたのだが。こちらは相原と何か話していた。
「お待たせしました」
遅れて最後に降りてきた山名が、距離的に近かった相原に向かって、そう声を掛けた。
 公用車だったり、個人の車だったり。どちらにしても「普通の乗用車」では着替えるには窮屈だわ、外からは素通しに覗けるわ…で女性秘書3人、狭さはともかく「高さ」だけはある科学局の車を更衣室代わりに使っていたからだ。
 おかげでその間、車中の機器も何も使えずに追い出されていた男性オペレーター2人である。
「太田~、車空いたって~っ」
 相原の呼んだに雪との会話を打ち切って、太田も仕事に戻っていく。
「金属反応とエネルギー反応重ねたら、武装読めないかな?」
「カートリッジのか?拾えるかな…そんなに強い反応出ないだろ?」
「停電させれば、弱くても拾えそうなんだけどねえ」
「それは、無理。パニック起こすつもりか」
 お互い、車から放り出されて何も出来なかったようでも、考える事だけは考えていたようだ。

  ◇ ◇ ◇ ◇

「…あ。お姉さんたちにお礼言っといてって、晶子さんが」
 改めて「仕事」を再開してしばらく、相原が思い出したように呟いた。
「え?ああ…服の事な」
先に呟いた相原も、それに答える太田も、そのくらいの会話に作業の手の全く止まらないのは、流石だった。
「ってか。礼は、もうモノで請求されてるからなあ」
「…やっぱり?」
 太田の呟くのに、相原が苦笑する。勿論、どちらも変わらず作業続けながら、だ。
 これまでの雑談の中に、それぞれの家族の話くらいは何度も出てきていた。だから相原が、南部の母親の名を既にご存知だったように。太田の姉妹それぞれの名前もご存知なら、その性格や言動も話の中に既にご存知。
 それからすれば服の数着を貸す前に、その返礼について実に細かく注文付けていても全く不思議では無く。
「ま、南部に払わせるけどな」「素直に払うかな~」
「南部が払わなかったら、お前から3分の1貰うぞ?」

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