FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

T-Party:02

 こういう場に出席(で)るのは、これが生まれて初めて…のサーシャである。
 従って、見るもの聞くものの全てが物珍しい状態。はぐれないように守の腕を捕まえたままで、目だけはきょろきょろと落ち着き無く見渡して。
「無駄に、天井高いわね~」
 …最初に口を突いて出る感想がそれ、というのもどうだろう?

「司令本部のエントランスの方が、天井は高いだろう?」
「エントランスより、中央司令室の方が高くないです?」
「中央司令室の場合は、天井が高いって言うより『底が深い』が正しい気もしますけどねえ」
「お前ら…司令本部以外に、比較の対象が思い付かないのか?」
 サーシャのすっとぼけた感想に続いた、3人のセリフも。それを多少は批難するらしい、もう1人のセリフも。いずれ劣らず、何処かしら的外れていたと言って良いだろう。
 ちなみに。真田、相原、南部…と続いた最後が、守だ。
「え~?司令本部以外だと、何処でやったら良いんですよ?」
「…だから、較べなくて良い」

  ◇ ◇ ◇ ◇

 訳も分からずに真田にメッセンジャーした後から、守には付き合えと言われたのでやって来た。それに相原の引き摺り込まれた事は、晶子から聞いて知っていたサーシャだ。
「…ってより、何で南部さんが居るのよ?」
 ついでに。長官に付いて雪の来る事も、当人から聞いていたが。
「親父さんの代理か?」
 これが政財官…と言うより軍だったが、ほど良く万遍無く招かれている集まりだと了承していて。南部が「誰」の息子だか分かっている守にとっては、当然の言葉だろう。
「いや…親父さまの代わりなのは、蓉子さんですけどね」
 誰だよ、それは?そう思った年長2人には、既にご存知な相原とサーシャがそれぞれ、南部の母親だ…と注釈を入れた。
「じゃあ、私と一緒って事?」
「似てますが、多分…違うと思いますよ」
 親に付き合わされた、という意味でそう訊いたサーシャだったが、南部はそれを否定した。
「だって、参謀は『お嬢さんを脅して』連れてきた訳じゃないでしょ?」

「仕方無いでしょう。あの人、急に月に行っちゃったんだもの」
 出席と返答もした後、これほどの直前になってから急に予定を変更せざるを得なかった。だから、自分が呼び付けられたのだとは、良く理解した。
 しかし、気の進まない…というよりはっきりご遠慮願いたい南部は「行く」とは返事しないまま、どう断ろうかと考えて黙っていたのだが。
「今からだと、流石に『浮気相手探す』のも間に合わないでしょう?」
「探さないで下さいっ!」
黙っているままの方が確実に拙いような事を、あっさり言ってくれる母親だった。
「なら、やっぱり貴方が来るのね?」
 …と、いう次第で。

「ねえ?浮気するわよ…って言うの、脅しになる訳?」
「雪が進に言う分には、充分だと思うが?」
 父娘の多分にふざけたやり取りに、お前はどうなんだ…と思った真田だったが。それをわざわざ口に出して、友人に訊いてみるほど間抜けてはいなかった。

  ◇ ◇ ◇ ◇

 鬱陶しいなどと言いつつも、思惑あって出席(で)てきた守である。しかし、自分からせっせと歩き廻るのは面倒だ。
 と、いう事で。
 その為に引っ張り出してきた真田には「逃げるなよ」と、サーシャをその腕に貼り付かせておいて。相原の襟首捕まえておけば、晶子が仕方無くその隣から離れないでいる。ただそれだけで、あちらの方から勝手に寄って来てくれる。
 あちらにも、あちらなりの思惑があるという事だ。
「まあ…まだ軍人の方がエラいんだよな、その辺の政治家より」
 それは、一見しては平和に見えている現在(いま)も、まだ何処かでは以前(まえ)の傷を引き摺っているという事。万が一を捨て切れずに、軍という組織を葬り去れないでいる程度には。
「しみじみ言うんじゃない、古代」
「独り言だろうが、聞き流しとけ」

 それにしても、と守が身長差に南部を見下ろした。
「お前って、意外に『人寄せ』の役に立たない奴だな」
 艦艇や航空機と、一つ一つの単価が高いにしても、軍が一番金を支払っている相手は「南部」だ。
 その殆ど最初から、知った顔が居るからと母親放ったらかしてここに居て。その間、あちらからあれだけの面子の近付いても来たというのに、その誰もが南部に一言の声も掛けないままで離れていった。
「ああ…それは無理ですね」
 それだけの言葉にも正しく意味は通じたようで、苦笑(わら)いながら南部が答える。
「もう随分と、こういう場に出てきた事無いですもん。現在(いま)の俺の顔知ってるなんて、軍の外では殆ど居ませんよ」
「…って、いつからなのよ?」
 隣での会話に、サーシャが素直な疑問を挟んだ。
「そうですねえ…地下都市(した)に移ってからは、無かったような気がしますが」
そんな回答に、それって何年前なのよ…とサーシャがつい指折って計算し始めた。
「10か、11から…って事?」
 計算始めたサーシャを見て、相原が代わりに訊いた。
 記憶の外だから計算しないと分からないサーシャに対して、同期の相原には計算の必要は無い。地下都市(まち)は違うが、自分の記憶を引っ張り出してくれば済む事だったからだ。
「小学生じゃないっ」
 現在しか知らないサーシャには、そんな年齢の南部なんて全く想像が付かない。それならその逆、その頃しか見憶えの無い連中に、今のこの姿の想像の付かないのも仕方無いかも知れない。
「そりゃ…確かに、無理だな」
 最初に問うた守が、大いに納得したところで。
「役に立たないんなら、離れてて良いぞ?」
無用ならば不要、と早速に南部を追い払いに掛かった。
 役に立たないのなら要らない、その言葉も嘘では無いが、それよりも。周りに「背の高い人間」ばかり揃っていると、実に鬱陶しい…などという、自分の事については2つくらい上の棚に放り上げたような理由もあったりする。
「え~?俺に、何処に行けって言うんですよ?」
「お袋さんの隣に戻ってりゃ良いだろ?」
「嫌ですよ。絶対、何処かのお嬢さんを物色してるに決まってるんですから。あの女(ひと)は」
「見繕ってくれる女(の)に不満あるなら、自分で探せよ」
 しかし、なかなか素直には追い払われてくれない南部だった。

 友人の目的の、ほぼ叶っただろうと見て。
「俺は、帰るぞ」
元より、こんな場に来たくて来た訳では無い真田が腕から娘を引き剥がしながら、律儀に帰宅を宣言した。
 招待状に記されていた時刻からは、既に1時間半。既に帰途に着いたものさえ、ちらほら。これ以上遅れてやって来るようでは、どんな世界でも出世は望めそうに無いだろう。
 それならば今より後から新たに、守の用のありそうな奴が来る事は無い…と踏んだからだ。
「好きに帰れよ」
 同じ判断で守にも、特に真田を引き止める理由は無い。呼び付けた礼も言わない代わりに、先程の宣言にあっさりと同意してみせた。帰れと言われて、真田は素直に山名を振り返った。
 真田が同伴者に山名を選んだのには、他意は無い。
 相原を引っ張ってくるのに、守は秘書であるその奥方を明け渡したから、仕方無くサーシャを連れてくる事にして。娘を使えない状況だったから、真田には秘書を選ぶしか選択肢が残されていなかっただけだ。
 しかも、真田には秘書が山名1人しか居ない。そこでも選択肢は無かったという事だ。
「送ってけよ?ちゃんと」
「…って、俺の車じゃないが?」
 秘書とは言え、女性。女性を自宅まで送り届けるという「常識」を、念の為にと思いながら言ってみれば、そんな返答だ。ここに来るにも山名が運転してきたんだし…と、実に正直に言ってくれる友人に、守は頭痛を感じた。
「…真田。お前が車を運転しない、したくない奴だとは充分知ってるけどな?こういう時の為に、公用車と運転手が在(い)るんじゃないのか?」
「…どちらも、無いが?」
 ものすごく、あっさりとした否定。
「ええ、局長は殆ど他出(で)られませんから。どちらも用意(お)くだけ、無駄です」
控えていた秘書からも、またきっぱりと。
 そう言えば…似たような理由で、局長職なら複数居て当然の秘書が1人しか居ないんだったと思い出した、サーシャと相原と南部だった。
 思いっきり、溜息を吐く。
 どういう理由だろうと、一応は「ドレスアップした女性の手を取って」いるにも関わらず、それを送っていく程度の芸当も出来ない、その手段も持っていない友人に今更ながら大いに呆れた守だ。
「…副局長に、公用車と運転手は?」
「それは勿論、ございます」
 守の問いに、山名が即答する。局長の出歩かない分を、その直下が全部被ってくれている訳だ。
「次があったら、そこから借りろ。良いな?」
「…分かった」
 何故、今こんな説教喰らっているのか釈然としない真田だったが、取り敢えず素直に頷いておく事にした。

「え~と…僕たちも、帰って良いですか?」
 こちらもこちらで、来る気などさらさら無かった相原が、これ幸いとお伺いを立てた。
「え~?」
「相原さん、帰っちゃうの~?」
それに不満を表明したのは守では無く、南部とサーシャだったが。
「明日、仕事有るんだよっ!」
「休めば良いじゃない」
「休めよ」
 相原の帰りたい理由には、サーシャと守が全く同じ返答をくれた。
「俺(ひと)が藤堂に明日の休みくれてやってんのに、お前は何してるんだよ?」

  ◇ ◇ ◇ ◇

 だが、しかし。
 真田にしても、相原にしても。その直後にやって来た者たちのおかげで、しばらく帰れそうには無くなってしまった。

 全く、招かれざる「客」の為に。

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
月別アーカイブ
リンク
美馬に連絡

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。